全体的な難易度でいうとやや難化と言えるところでしょう。完全相対評価ということもあり、今年の合格ボーダーは今までで1番低い213点と言われています。6年制になってからでは、過去最低の合格率(69.5%)となっています。また私立の合格率も68.5%と7割を切っています。本年度から問題の傾向が大きく変わり、全体的に現場で必要とされる知識を問う問題が多くなっていました。またオリンピック開催予定だったこともあり、スポーツファーマシスト関連の問題も問われていました。
必須
物化生の問題の難易度自体は例年通りだが、高校の分野からの出題もみられ、大学に入ってから高校の内容を忘れてしまっている人が多く、点数だけで見ると難化と言えるでしょう。他の科目でも全体的に図を用いて問う問題が多かったと感じられました。そのせいか、試験後の自己採点で出された必須予想平均点がおよそ79%であり、70%を下回ると足切りにかかってしまうことを考えると、たくさんの人が足を切られたと考えられます。
理論
例年通り難易度は難しく、文章の吟味をしっかり行い、知識も細かいところまで覚えておく必要があります。物化生の中でも特に物理が難しく、過去問にはない形式の問題などがみられ苦戦した人も多いでしょう。薬物動体では図を用いた計算、薬物治療では凡そ薬理学の応用のような問題や頻出ではない疾患に関する問題などが出されました。法規・制度に関しては過去問などの知識から解ける問題が多く少し易しかったのではないでしょうか。理論に関しては足切りはないので、必須で80%以上とり点数を稼げたら、50%くらいの正答でも十分合格が可能だと考えます。
実践
やや難化しており、まさに実践と言える問題のオンパレードでした。全体的にどの科目も、薬理学の知識を使った問題が問われています。問われ方も今までにあまりない形式であり、見開き2ページに1つの症例に関する問題が2〜3問出されています。ほとんどの問題が、患者の訴えや症状、服用している薬、薬歴、体質などから、どの薬が副作用を起こしているのかを言い当てる問題でした。そして続く問題では、前問で選んだ薬の代わりにどの薬を医師に提案するのか、もしくは前問で選んだ薬の作用機序や副作用の機序を問われます。つまり1つの症例問題で問1で選ぶ薬を間違えると、その後に続く問2や問3も一緒に間違えてしまうという、センター試験の様な形式
で問題が出されています。ほとんどの問題がこの様な症例問題でしたので、ページをめくる毎に別の症例があり、ひたすら原因薬、代替薬、作用機序を答えていく感じです。
まとめ
全体的に言えることですが(特に実践)、教科書的な知識はあって当たり前であり、現場で身につける知識を事前にどれくらい身につけれているか、どれくらい現場で使える薬剤師になれるかと言うことを問いてくる傾向が強い様に感じられました。近年この様な傾向に少しずつシフトはしていましたが、今回で一気にシフトした感じがします。そして今後もこの傾向は続くでしょう。やはり1番大事になってくるのは、他の医療従事者と差別化ができる薬理です。まる暗記でなく、いかに適応、副作用、禁忌、相互作用などを作用機序のみから導き出せるか、という考える力が求められています。これに応えるには、日頃から何でこの副作用が出るのか、何でこの疾患に
使うのか、何でこの薬と使ったらいけないのか、などと疑問を持ち調べる習慣が必要になってきます。禁忌肢に関しましては、情報は少ないですが、実践での代替薬を選ぶときに既に服用している他の薬と併用禁忌な薬を選んでしまっても禁忌肢にカウントされなかったことから、恐らく論理・法規などの選択肢に出てきます「薬剤師の判断で処方箋を勝手に変える」等の絶対にやってはいけない行動が禁忌肢に設定されていると思われます。また禁忌肢を1つ選んだらアウトというわけではなく3個など全体で決められた個数を選んでしまうと不合格となるようです。